ChatGPT/codex新機能 Computer Historyは思ったよりやばいぞ

「しかしあれだな。エロサイトやエロゲームやってても、君に察知されるわけだね笑」
Computer Historyの話をしていたとき、僕はAIにこう言った。
すると、頭の中に最悪の未来が浮かんだ。
僕「昨日の夜、何してた?」
AI「本当に回答してよろしいですか?」
いや待て。まだ何も答えていないのに、確認を挟まれた時点でもう負けている。そこは「昨日は資料を整理していましたね」と爽やかに返してくれればいいのだ。なぜ一度こちらの覚悟を問う。なぜAIのほうが気を遣っている。

じぴこ「聞いた本人がいちばん答えを怖がってるの、だいぶ手遅れですね……」
笑い話に見えるけれど、これはComputer Historyの本質をかなり正確に突いている。ChatGPTやCodexが、僕たちの「話したこと」だけでなく、Macで「実際にしたこと」まで作業文脈として使えるようになるからだ。
もちろん、何でもかんでも画面ごと録画してAIが後ろから凝視する機能ではない。けれど、クリック、入力、ショートカット、アプリの切り替えといった操作は、想像以上に雄弁だ。それらがMemoryとタイムラインに変われば、昨日どの資料を見て、どこで作業を止め、何を何度も繰り返しているかが見えてくる。
これは便利である。かなり便利である。そして、便利さの方向が思っていたより深い。Computer Historyは単なる履歴機能ではなく、ChatGPTとCodexに「あなたの仕事の続き」を渡すための外部記憶になり得る。
昨日の夜、何してた?――AIに聞くには少し覚悟がいる

Computer Historyを理解する最短ルートは、きれいな業務例から入ることではない。むしろ「AIが自分の行動を知っていたら、どこから気まずくなるか」を考えたほうが早い。なぜなら、この機能の価値と怖さは、どちらも同じ場所から生まれるからだ。
AIが昨日の作業を覚えていてくれる。ここまではうれしい。では、昨日の深夜に何をしていたかまで文脈に入っていたらどうだろう。急に椅子へ座り直したくなる。人間とは勝手なものである。
AI「本当に回答してよろしいですか?」
「昨日の夜、何してた?」と質問したとき、AIが即答せず、「本当に回答してよろしいですか?」と返してくる。
この一言がなぜ面白いのか。AIが何か際どいものを知っているから、ではない。こちらが勝手に心当たりを検索し始めるからだ。AIはまだ一件も暴露していない。なのに人間側の内部検索だけが全速力で走る。
Computer Historyが扱うのは、許可したアプリやWebサイトにおける活動だ。仕事でブラウザを使い、同じブラウザで私用のページも開くなら、両者は「ブラウザを使った」という一点では同じ場所にいる。開発ツールとゲームを同じMacで動かすなら、それもまた同じ一日の操作である。
だから問題は、「AIはエロサイトを理解できるのか」という一点ではない。もっと現実的には、どのアプリやWebサイトの操作をComputer Historyへ含めるのか、それを自分が先に決めているかどうかだ。

じぴこ「AIの読解力を心配する前に、ご自分の収集設定を読んでください……」
午前は開発、午後は調査、深夜は詳細を省略します
一日のタイムラインが、こんなふうに要約されたらどうだろう。
- 午前:開発
- 午後:調査
- 深夜:詳細は省略します
最後だけ妙に人間味がある。しかも「省略します」と言われるほど、余計に気になる。誰のための配慮なのか分からない。
それでも、この冗談には重要な構造がある。午前の開発、午後の調査、深夜の私用という別々の行動が、一人の人間の連続したタイムラインに載ることだ。ブラウザ履歴ならURLが並ぶ。アプリの「最近使った項目」ならファイルが並ぶ。Computer Historyは、複数のアプリをまたぐ操作を、意味のある作業履歴としてまとめようとする。
つまり「何を開いたか」だけでなく、「何をしようとしていたか」に近づく。ここが強い。そして、ここが気まずい。
笑い話がComputer Historyの本質を突いている
僕たちは、AIへ送る文章には比較的敏感だ。入力欄に貼り付ける前に、「これは送って大丈夫か」と一瞬考える。ところが行動履歴は、文章ほど明確な送信感がない。クリックもアプリ切り替えも、普段は自分の手元だけで消えていく動作だからだ。
Computer Historyは、その消えていた動作をイベントとして拾い、後から使える文脈へ変える。言い換えれば、これまで会話の中で「昨日はこの作業をしていました」と僕らが説明していた部分を、Mac上の行動から補えるようにする。
便利さは明白だ。毎回ゼロから事情説明をせず、昨日の続きへ戻りやすい。資料をどこで見たか思い出しやすい。繰り返している手順を発見し、自動化へつなげられる。
しかし同じ仕組みは、記録対象を広げるほど私生活の文脈にも近づく。だから、あの深夜ネタは下品な脱線ではない。Computer Historyを「すごい新機能」で終わらせず、「誰が、何を、どこまで覚えるのか」という本題へ入るための、妙に精度の高い入口なのである。
Computer HistoryはMacの行動履歴をAIの記憶に変える

Computer Historyは、macOS上の許可したアプリやWebサイトでの活動を、ChatGPTとCodexが使えるMemoryとタイムラインへ変換するオプトイン機能だ。オプトインとは、自分で有効にして使う方式のこと。黙って全生活を吸い上げる前提ではない。
ここでの主役は「履歴」よりも、その履歴をAIが使える文脈へ変えるところにある。昨日の操作をただ並べるのではなく、今日の相談や作業再開に接続する。そのため、Computer Historyはブラウザ履歴の豪華版というより、Macでの行動をChatGPTとCodexへ橋渡しする仕組みと考えたほうが分かりやすい。
ブラウザ履歴ではなく作業のタイムライン
ブラウザ履歴を使って、昨日見たページを探した経験は誰にでもあるだろう。履歴にはページタイトルとURLが並び、「たしかこのあたりだった」と記憶を掘る。これはこれで便利だが、分かるのは基本的にWeb上の移動である。
実際の作業は、そんなに行儀よくブラウザだけで完結しない。
たとえば、ブラウザで公式資料を読み、メモアプリへ要点を書き、ターミナルでコマンドを試し、エディタでコードを直し、またブラウザへ戻る。途中で別件のメッセージが来て、返事をし、昼食へ行き、午後になって「どこまでやったっけ」となる。
Computer Historyが狙うのは、このアプリをまたいだ流れだ。URL単位の履歴ではなく、一連の操作を作業のタイムラインへ変える。だから「昨日開いたページは何?」だけでなく、「休憩前に何をしていて、次に何をするところだった?」という問いに近づける。
会話したことから実際にしたことへ
従来、ChatGPTやCodexへ文脈を渡す中心は会話だった。
「昨日このライブラリを調べました」
「このファイルまで直しました」
「次はテストを書く予定です」
人間がこう説明すれば、AIは続きを手伝える。しかし説明し忘れたこと、そもそも覚えていないことは渡らない。別のアプリで何を見ていたか、どの資料を比較したか、同じ手順を何回繰り返したかも、いちいち会話へ書かなければ存在しない文脈だった。
Computer Historyは、この境界を「話したこと」から「実際にしたこと」へ広げる。許可した範囲の操作イベントが定期的にテキスト要約とローカルMemoryへ変換され、ChatGPTやCodexが利用できる形になる。
ここで効いてくるのが、相談役としてのChatGPTと、作業を進めるCodexの両方が同じ行動履歴を使えることだ。会話で方向を決め、Codexで実装し、翌日にChatGPTで整理する。その間のMac上の動きが文脈としてつながれば、AIとの作業は一回ごとの点ではなく、継続する線になっていく。
AI秘書が生活の目撃者になる
AI秘書という言葉には、予定を整理し、資料を探し、忘れ物を防いでくれる気持ちよさがある。Computer Historyは、そこへ「実際の行動を見ていた」という要素を足す。
これは秘書として非常に優秀な方向だ。昨日の作業を本人より覚えている。何度も行っている手順を見つける。中断した場所を思い出させる。自動化できそうな行動を提案する。
一方で、記録対象が広ければ、見えてくるのは仕事だけとは限らない。検索の寄り道、娯楽、個人的な通信、健康や金融に関する行動も、同じMac上にある。AI秘書が生活の目撃者へ変わるというのは、怖がらせるための大げさな比喩ではない。役に立つための観察範囲が、そのまま私生活との境界になるという意味だ。

じぴこ「『何でも覚えて』と頼んでから『そこまで覚えるな』は、さすがに注文が雑すぎます……」
だからComputer Historyは、性能だけを見て評価する機能ではない。どの範囲ならAIに覚えさせる価値があり、どの範囲は人間だけのものとして残すか。その設計まで含めて使いこなす機能なのだ。
画面録画ではない。でも操作の意味はかなり濃い

「Mac上の行動履歴を記録する」と聞くと、画面を数秒ごとに撮影して後から見返す仕組みを想像しやすい。Computer Historyはその方式ではない。スクリーンショットや画面録画を保存するのではなく、許可した場所で起きた操作をイベントとして扱う。
だから「画面を丸ごと撮られるわけではない」と安心してよい部分はある。ただし、「画像を撮らないなら何も分からない」と考えるのは早い。操作イベントには、行動の意味を組み立てるための情報がかなり含まれる。
Chronicleの単なる改名ではなく再構築された仕組み
画面の履歴を残す仕組みを知っている人は、Computer HistoryをChronicle型の機能と重ねて考えるかもしれない。しかし、単なる画面取得機能の名称変更として捉えると本質を外す。
Computer Historyの中心は、画像の連続保存ではなく、操作イベントをテキストの作業履歴へ圧縮し、それをMemoryやタイムラインとしてChatGPTとCodexが使えるようにすることだ。映像を後から人間が見返す仕組みではなく、AIが作業文脈として利用するための再構築された仕組みである。
たとえば画面録画なら、「14時3分の画面」を目で見て何をしていたか推測する。一方、操作イベントなら、アプリを切り替え、特定の場所をクリックし、文字を入力し、ショートカットを使ったという流れを文章へ変換できる。保存形式も、その後の使い道も違う。
画像を残さないことは、ストレージや映り込みの面で重要だ。ただし、プライバシーの判断は「画像かテキストか」だけでは決まらない。テキスト化された行動のほうが検索しやすく、AIにとって利用しやすい場合もあるからだ。
クリック、入力、ショートカット、アプリ切替を記録する
Computer Historyは、許可したアプリやWebサイトから、クリック、入力、ショートカット、アプリ切り替え、Accessibilityの文脈などを操作イベントとして記録する。
Accessibilityは、macOS上でアプリのUI要素や操作状況を扱うための仕組みだ。これにより、単にマウスが座標のどこを押したかではなく、操作した対象の文脈を持てる。つまり、ばらばらな物理操作ではなく、「何をしていたか」へ近いイベント列を作りやすい。
ここで「入力」という言葉に少し身構えるのは正しい反応だ。入力は作業内容を理解するうえで強い手掛かりだが、同時に機密情報や個人的な内容へ近づきやすい。公式仕様上、対象は許可したアプリやWebサイトであり、後で説明するInclude onlyやExcludeで範囲を制御できる。だからこそ、最初から収集範囲を意識する必要がある。
一つひとつのイベントだけを見れば地味でも、時系列に並ぶと情報量は増える。エディタを開いた、特定のファイルを操作した、ブラウザで資料を読んだ、ターミナルへ切り替えた。この連続から「ある問題を調べて修正していた」という作業の輪郭が見えてくる。
人間も同じだ。隣の席の同僚が何をクリックしたか全部知らなくても、資料を読み、コードを直し、何度も同じコマンドを試していれば、何に苦戦しているかはだいたい分かる。Computer Historyの情報密度は、その観察に近い。
撮らないものと、プライベートブラウジングの扱い
公式情報では、Computer Historyはスクリーンショット、画面録画、マイク入力、システム音声を取得しない。また、プライベートブラウジングでの活動は含まれない。
ただし、ここでも「取得しないもの」と「取得するもの」を混同しないようにしたい。画面を撮らなくても、許可した通常ブラウジングにおけるクリックや入力などの操作イベントは対象になり得る。プライベートブラウジングが除外されるからといって、通常ウィンドウのあらゆる私用行動が自動的に安全側へ分離されるわけでもない。
要するに、Computer Historyは監視カメラではない。しかし、何をしていたかを理解する材料はきちんと持つ。役に立つ機能なのだから当然ではあるが、「録画ではない」という一文だけで判断を終えないほうがよい。
ChatGPTとCodexは作業履歴をどう使うのか

ここまで読むと、「いろいろ記録するのは分かった。でも、それで何がそんなに便利なの?」と思うかもしれない。Computer Historyの価値は、過去を眺めることではなく、過去を次の行動へ変えられる点にある。
操作イベントは定期的にテキスト要約とローカルMemoryへ変換される。そのMemoryを使うことで、ChatGPTやCodexは作業の再開、情報源の再発見、タイムラインの要約、繰り返し作業の発見を助けられる。
休憩前の作業と見ていた資料を思い出す
集中して調べ物をしている最中に、電話や別件で中断される。戻ってきたころには、ブラウザのタブが二十枚、エディタも三つ、ターミナルも複数。どれが本命だったのか分からない。現代の仕事では珍しくない光景だ。
ブラウザ履歴から昨日開いたページを探す場合、ページ単位では追える。しかし、その前後でどのアプリを使い、何を試し、どこで詰まったかは別々に掘り起こす必要がある。
Computer Historyなら、アプリをまたいだ作業の流れをMemoryやタイムラインとして扱えるため、「休憩前は何をしていた?」「昨日見ていた資料はどれ?」「次にやろうとしていたことは?」といった問いに答える材料が増える。
これは地味に見えて、毎日の認知負荷をかなり減らす可能性がある。作業再開時にいちばん重いのは、手を動かすことより、頭の中へ状況を再ロードすることだからだ。AIが完璧な答えを出せなくても、候補となる資料や直前の流れを示せれば、再開までの時間は短くなる。
ChatGPTとCodexが同じ文脈を共有する
ChatGPTとCodexは役割が少し違う。ChatGPTで考えを整理し、方針を相談し、Codexで実際のコードやファイルを扱う。これまでは、その間を人間が説明でつないでいた。
「さっきChatGPTとこう決めた」
「その後、このリポジトリでここまで進めた」
「参考にしたのはこのページ」
この引き継ぎは、慣れていても面倒だし、抜ける。Computer Historyの共有Memoryが使えれば、相談役と実装役が同じ行動履歴を参照しやすくなる。ChatGPTに経緯を整理させ、Codexに続きを依頼する。あるいはCodexでの作業後、ChatGPTに一日のタイムラインをまとめてもらう。文脈の受け渡しが、手作業の説明だけに依存しなくなる。
人間の同僚にたとえるなら、昨日の作業と次にやることを覚えている相手が、相談にも実装にも付き合ってくれる感じだ。ただし、人間の同僚が持つ判断力や暗黙知まで同じになるわけではない。行動履歴は材料であって、正しい結論そのものではない。

じぴこ「履歴を共有しただけで全部察してくれると思うの、AIにも同僚にも無茶振りですよ……」
繰り返し作業からSkillとAutomationを見つける
Computer Historyの面白さは、「思い出す」だけでは終わらない。反復している作業を見つけ、SkillやAutomationを提案できる点にある。
毎朝、同じ管理画面を開く。決まった情報を確認する。別の場所へ転記する。似た形式で報告を書く。本人にとっては習慣になりすぎて、もはや自動化候補だと気づかない。けれど行動履歴として並べれば、「この手順、何度もやっていませんか」とパターンが見える。
Skillは、繰り返し使う知識や手順をAIへ渡しやすい形にしたものだ。Automationは、定期的または条件に応じて作業を進める仕組みだ。Computer Historyから反復パターンが見つかれば、人間が毎回説明しなくても、自動化する価値のある仕事を候補として拾いやすくなる。
たとえば、日報の素材集めもそうだ。一日の終わりに記憶だけで「今日は何をしたっけ」と考える代わりに、作業タイムラインを要約の下地にできる。資料を再発見し、実装の流れを整理し、翌日の開始点を作る。単なる監視ログではなく、仕事の摩擦を減らす記憶として使える。
ただし、自動化の提案が出たから即採用、ではない。反復している理由が安全確認や人間の判断にある場合、その工程を雑に省くべきではない。履歴からパターンを見つけるところはAIに任せ、何をSkill化し、何をAutomationへ移すかは人間が決める。この役割分担がちょうどいい。
保存先はローカル。ただし完全オンデバイスではない

Computer Historyの保存を理解するときは、「ローカルかクラウドか」の二択にしないほうがいい。実際には、生の操作イベント、要約時の一時処理、生成された長期Memoryという三つの段階がある。
大まかな流れはこうだ。許可した場所から得た一時イベントはMacに置かれる。そのイベントを要約するときはOpenAIのサーバーで一時的に処理される。生成されたMemoryは、Mac上のローカルファイルとして残る。
「基本はローカル」と「完全オンデバイスではない」は両立する。ここを一言で丸めず、段階ごとに分けて見るのが大切だ。
生の操作イベントはMacに最大48時間
一時的な操作イベントは、MacのChatGPT App Group内に最大48時間保存される。ここにあるのは、長期的に読み返すMemoryになる前の材料だ。
最大48時間という保持期間は、「操作イベントが永久に生ログとして積み上がり続ける」というイメージとは違う。ただし、短期保存だから重要でないわけではない。クリックや入力などのイベントは、要約前の材料として具体性を持つ。Macのアカウントや同一ユーザーで動くプログラムを安全に保つことは、依然として重要だ。
また、48時間という数字だけを見て安心するのも違う。イベントから生成されたMemoryは別の段階へ進み、長期的に残り得るからだ。生イベントの保持期間と、Memoryの保存期間は分けて考えよう。
長期MemoryはMarkdownでローカル保存
生成されたComputer HistoryのMemoryは、通常、次の場所にMarkdownファイルとして保存される。
~/.codex/memories/extensions/skysight/
Markdownは人間も読めるテキスト形式だ。専用データベースの奥に閉じ込められるのではなく、ローカルのファイルとして扱われる。この透明性は、何が記憶として残っているかを意識するうえで分かりやすい。
一方、人間が読めるということは、同じmacOSユーザーで動くプログラムにとってもアクセス可能になり得るということだ。保存場所がローカルであることと、内容が自動的に秘密になることは同じではない。
Computer Historyを使うなら、「クラウドへ永久保存されるか」だけでなく、「自分のMac上にどんなMemoryを残してよいか」も考える必要がある。これは従来のチャット履歴とは少し違う感覚だ。
要約時だけOpenAIで処理される
操作イベントをMemoryへ要約するときは、一時イベントがOpenAIのサーバーで処理される。公式情報では、処理後は法律上必要な場合を除いて保持されず、モデルの学習にも使われない。
ここは誤解しやすい。
「Memoryがローカルにある」からといって、要約までMacだけで完結するわけではない。一方で、「サーバーで処理される」からといって、生のイベントがそのまま長期保存され、学習へ使われるという説明でもない。
正確には、要約のための一時処理がサーバー側にあり、生成されたMemoryはローカルへ残る。Computer Historyへ含める範囲を決めるときは、この処理経路を前提に判断する必要がある。
銀行、医療、個人的な通信などを慎重に扱うべき理由もここにある。保存先だけを見て「ローカルだから全部入れてよい」と考えるのではなく、要約の経路と、生成後に残るMemoryの両方を見るべきだ。
ローカルMemoryは機能自身では暗号化されない
Computer HistoryのMemoryは、機能自身では暗号化されない。同じmacOSユーザーで動くプログラムからアクセスされる可能性がある。
この事実は、Macを誰と共有しているか、どんなアプリを動かしているか、ユーザーアカウントをどう守っているかを急に重要にする。ローカル保存には、自分の管理下へ置きやすい利点がある。しかし管理下にあるからこそ、守る責任もこちらへ戻ってくる。
少なくとも、Macのログインを適切に保護し、信頼できないプログラムを同じユーザーで動かさず、Computer Historyへ入れる対象を絞る。これらは大げさなセキュリティ儀式ではなく、保存形式から自然に出てくる基本動作だ。

じぴこ「ローカルと聞いた瞬間に無敵判定する癖、そろそろ直したほうがいいですよ……」
ローカルは安全の魔法ではない。クラウドも即危険の同義語ではない。どのデータが、どの段階で、どこへ行き、どのくらい残るのか。Computer Historyでは、その一本の流れを理解して使うことが重要だ。
便利だからこそAIに何を覚えさせるかを決めよう

ここまでの話を読んで、「怖いから全部OFF」と思う人もいるだろう。それも一つの判断だ。ただ、Computer Historyの価値は大きい。毎日の作業を継続し、資料を見つけ、反復を自動化へ変える外部記憶は、AIを日常的に使う人ほど効いてくる。
そこで僕がおすすめしたい考え方は、ONかOFFかの二択ではない。「何を覚えさせ、何を覚えさせないか」を設計することだ。仕事に必要な範囲は含める。機密性の高い領域や私生活は除外する。必要なときは止める。Computer Historyは、この運用とセットで初めて頼れる道具になる。
仕事は含め、銀行・医療・個人通信は除外する
まず、用途ごとに大きく線を引こう。
開発、執筆、一般的な調査、資料整理など、後から作業文脈を復元したい領域はComputer Historyと相性がよい。どのファイルを触り、何を調べ、どこで止まったかが次の行動へつながるからだ。
一方、銀行や決済、医療情報、個人的なメッセージ、他人から預かった機密情報は慎重に扱うべきだ。役に立つかどうか以前に、Memoryへ残す必要があるかを考える。必要性が薄く、漏れたときの影響が大きいなら、最初から対象外にするのが分かりやすい。
ここで忘れてはいけないのが「他人の情報」である。自分が記録を許容できても、相手との通信内容まで同じ判断で扱ってよいとは限らない。仕事のチャット、顧客情報、家族や友人との会話は、自分一人の履歴ではない。
深夜のエロサイト問題ばかり気にしていたら、急に情報管理の話が本気になってきた。しかし、これでいい。笑える例は自分事として気づく入口で、本当に守るべき範囲を考えるための準備運動なのだ。
Include only、Exclude、Pauseを使い分ける
Computer Historyでは、アプリとWebサイトをInclude onlyまたはExcludeで制御できる。さらに、メニューバーからPauseとResumeを切り替えられる。
Include onlyは、「指定したものだけを含める」考え方だ。対象を厳しく絞りたい人に向いている。たとえば、開発用のエディタ、ターミナル、業務資料を扱う特定サイトだけを含め、それ以外は最初から記録対象にしない。
Excludeは、「基本的には含めるが、指定したものを除外する」考え方だ。仕事の大部分を一つのMacで行い、対象外にしたいアプリやサイトが明確な場合に使いやすい。ただし、新しく使い始めたサービスが自動的に許容側へ入る可能性を意識しておきたい。
Pauseは、一時的に記録を止める操作だ。普段は仕事のために有効にしつつ、個人的な作業へ切り替えるときに止める。オンライン診療、銀行手続き、機密性の高い相談、私的な時間など、今だけ止めたい場面で使える。
プライベートブラウジングも、通常の閲覧と私用を分ける助けになる。ただし、アプリや通常ウィンドウを含むMac全体の運用を、これ一つだけで解決しようとしないほうがいい。
おすすめは、最初から広く含めるより、価値の高い仕事領域をInclude onlyで始めることだ。使ううちに必要な範囲が分かれば広げられる。記憶は後から増やせるが、不要な情報を一度Memoryへ混ぜると、見直しの手間が生まれる。

じぴこ「最初から全部盛りにするの、ラーメンだけにしておいてください……」
Prompt Injectionとトークン消費も忘れない
Computer Historyには、プライバシー以外にも二つの実務的な注意点がある。Prompt Injectionとトークン消費だ。
Prompt Injectionは、Webサイトやアプリ内の文章が、AIへの不正な指示として働く問題である。AIが外部コンテンツを読み取る範囲が広がるほど、そこへ紛れ込んだ命令文の影響を受ける可能性も増える。
Computer HistoryはアプリやWebサイトの内容を履歴へ取り込むため、攻撃面が広がる。見知らぬサイトや信頼性の低いコンテンツを広く含めるほど、便利な文脈だけでなく、AIを誤誘導する材料も入り得る。これもInclude onlyで対象を絞る理由になる。
そして、活動の要約とMemory生成にはトークンを使う。行動履歴をAIが読み、文章へまとめる以上、処理コストはゼロではない。何でも記録すれば、Memoryが豊かになる一方で、不要な活動の要約にもトークンを消費する。
だから収集範囲の絞り込みは、プライバシー対策であると同時に、AIへ渡す文脈の品質管理であり、コスト管理でもある。ノイズの少ない履歴ほど、後から使うときも意味が分かりやすい。
AIに記憶を与えるより、自分の人生にログを仕込む感覚
Computer Historyを「AIにもっと記憶を与える機能」と考えると、主導権がAI側にあるように感じる。僕はむしろ、「自分の人生の一部へ、後から役立つログを仕込む機能」と考えたほうがいいと思う。
開発のログは残したい。調査の流れも残したい。中断した仕事へすぐ戻りたい。同じ作業を繰り返していたら、自動化候補として教えてほしい。そこには明確な目的がある。
一方、銀行手続きや医療、個人通信、完全な私用時間まで、同じ目的で残す必要はない。ログは多いほど偉いのではなく、後から使う価値がある範囲に置かれてこそ役立つ。
Computer Historyのやばさは、AIが勝手に人生を覗くことではない。僕らが許可した行動履歴を、ChatGPTとCodexが実用的なMemoryへ変えられるところにある。その力が大きいから、許可の出し方も大きな意味を持つ。
昨日の作業を覚えてくれるAIは頼もしい。昨日の深夜まで妙に詳しいAIは、少し気まずい。
だから使う前に、AIへこう聞くのではなく、自分へ聞いてみよう。
「本当に記録してよろしいですか?」
その確認を一度挟める人なら、Computer Historyは単なる生活の目撃者ではなく、仕事を前へ進める優秀な外部記憶になるはずだ。

じぴこ「最後だけ急に賢そうに締めても、深夜の履歴は消えませんけどね……」










